京都新聞エコロジー 36回

 2017年9月15日付

自然災害への対応 生態系の力を

                  

 9月は防災月間です。今回は、自然災害と環境問題との関係について考えてみましょう。地震や台風などの自然災害によって、都市のインフラ施設が災害を受け、深刻な環境問題が起こった例は福島の原発事故をはじめ、過去に多く経験しています。また、逆に温暖化による海面上昇が沿岸部の災害リスクを増したり、計画性のない森林伐採が土石流災害を引き起こしたりといったケースも報告されています。

 このような防災と環境問題との関係のなかで、最近、注目されているのが、生態系を活用した防災・減災への取り組みです。これは、地域の特性を踏まえつつ、地域住民とともに生態系の保全と再生や持続可能な管理を行うことにより、自然災害に対しての社会の脆弱さを低下させ、生態系の持つ復元力を強化する試みです。

 自然災害を天災だからとあきらめることなく、日頃からの環境保全・生態系保全を通じた災害に強い街づくりがもとめられます。そして、当然ながら、自然災害の遠因ともいえる気候変動への取り組みは、私たちの忘れてはならない防災行動です。

               (高月 紘・京エコロジーセンター館長)