京都新聞エコロジー40

保存区域の景観 大切に保全を

最近、都市郊外の開発行為に対し、地元住民が景観破壊を懸念して訴訟を起こすケースがしばしば見られます。しかし、これまで住民側の主張はことごとく退けられてきました。

ところが2009年、広島県・鞆(とも)の浦の開発事業に関する訴訟で、初めて景観の歴史的・文化的価値が認められ、住民の景観利益が認定されました。おそらく、これからは環境問題として歴史的文化環境権(景観権)が重視されることになると思われます。

今回のイラストのように、日本人の多くは里山の景観に憧れを持つ一方で、都会の生活の利便性も捨て難いと思っています。そんな中で、私たちは郊外の開発事業に関してどのように取り組めばよいのでしょうか?

京都市では、古都保存法の下で歴史的風土保存区域が指定され、景観を守るためにさまざまな施策がなされています。私たちは、少なくとも京都人として、まずは保存区域の景観を大切に保全していく必要があります。併せて、環境問題としての景観の価値について理解を深めることが大切だと思います。

 

               (高月紘・京エコロジーセンター館長)