京都新聞エコロジー 53

エコな思想「草木国土悉皆成仏」

 最近、著名な哲学者である梅原猛氏は、「人類文化を持続的に発展させる原理は西洋文明ではなく日本文化の中にある」と説いておられます。

 特に氏が注目されているのが「草木国土悉皆(しっかい)成仏」という日本の仏教の思想です。これは、地上のすべてのものに仏が宿るという考え方で、西洋の一神教的な世界観(神の下に人間が存在し、人間がすべての生物を支配する)とは異なる東洋的な世界観です。

 「草木国土悉皆成仏」の思想の背景には、日本の稲作文明における太陽と水に対する崇拝と、森林を保全する循環の考え方が深く関わっているとも述べられています。そして、西洋哲学が生んだ近代科学が現在の地球環境破壊につながっている今こそ日本の文化を見直すべきとも述べられています(梅原猛著「人類哲学序説」・岩波新書)。

 難しい哲学的な意味合いはともかく、エコロジーの視点からも、「草木国土悉皆成仏」

という自然との共生の思想に学ぶべきところが多いようです。

 

          (高月紘・京エコロジーセンター館長)