- 作者名(ペンネーム):
ハイムーン(High Moon)
- 本名:高月 紘(たかつき ひろし)
- 環境マンガ家(日本漫画家協会会員)
- 京エコロジーセンター前館長
- 京都大学名誉教授
- 専門:廃棄物工学、環境教育
以前、大学の授業でこの漫画について学生たちにコメントを書かせたところ、「その通り、今のプラスチックごみの分別方法はわかりにくいのでもっとわかりやすくすべきである」という意見が散見され、驚いた。そして、漫画によるメッセージの伝え方は難しいものだと思った。
色々な日常品がプラスチック製に変わりつつある今日、すでに、紙幣はプラスチック製のものが出現していますが、さすがに新聞やトイレットペーパーはまだのようです。しかし、マンガの世界はやがて、現実になるかもしれません。
この作品には、やや思い入れがある。制作は1985年であるが、もし、消費者がスーパーのレジのところでトレーやパックから商品を取りだし、トレーやパックをその店のくずかごに捨てればそのごみはスーパー側のごみとなり、スーパーが処理責任を負うことになる。事業者責任が問えると言うので、「パック・バック」運動と銘打って漫画にしてみた。ところが、高知市の消費者団体が実際に「パック・バック」運動を始めたと聞いて驚いたことがある。今でこそ、多くのスーパーでトレーや卵パックの回収が行われるようになったが、当時としては画期的な運動であった。
LCA(ライフサイクル・アセスメント)は、対象となる製品の原材料採取から製造、消費、廃棄のすべてのプロセスでの環境負荷を統合して、その製品の環境影響を評価する手法である。例えば、プラスチック製品の場合を考えてみよう。使用する際も軽くて、割れにくいなどの利点が多い。しかし、それらが廃棄物になった場合には、分離しにくく、かさばり、腐らない。しかも、高カロリーで有害ガスを発生するものも多い。また、石油製品のなので、温暖化に寄与する割合も高い。したがって、LCA的にみれば、プラスチック製品の中には必ずしも高い評価が得られないものもあると思われる。
土壌微生物こそが自然循環の主役です。自然界では、動物であれ、植物であれ寿命がくれば、朽ち果てて、地面に横たわります。それから、土壌微生物の働きで有機物は分解されて、次の世代の栄養物として循環されていきます。ところが、化石燃料の石油から生成されたプラスチック類は土壌微生物によって簡単には分解されません。すなわち、土壌微生物によって食べられない物質なのです。したがって、いつまでも土壌中にプラスチックは残存し続けるのです。
これまで、長い間PETボトルによる飲料の販売は、大型の1500L(リットル)のみが許可されており、小型のPETボトルの販売は散乱のごみの心配から規制されていました。ところが、PETボトルもリサイクルの可能性があると言うことで、小型のPETボトルの販売も許可されて、急激に消費量が増加しました。中には、一口容量のPETボトルも登場して、またたく間に飲料容器のシェアはPETボトルによって凌駕されました。
このイラストは、今話題のマイクロプラスチックを取り上げているのですが、実は描いたのは2010年で、今から10年前のことで、まだ、マイクロプラスチックという言葉さえ一般の人には知られていませんでした。ハイムーン氏は先見の明があると、自慢する訳ではありませんが、プラスチックによる海洋汚染問題は、研究者の間ではそれなりの関心がありました。このイラストでも示してるように、海水中の微細なプラスチックと共に、海底に堆積しているプラスチックがこれから大きな問題になるものと思われます。
これまでのプラスチックは石油から生成されていましたが、有機物(バイオ)から生成されたプラスチックが登場してきました。これは、有機物を分解してエタノールをつくり、これをもとに石油からと同様な方法でプラスチックを合成する方法で、原料が有機物(サトウキビやトウモロコシ)であるので環境に優しいプラスチックとみなされています。まだ、一部ですが実用化されつつあります
最近、プラスチックごみの世界総量が63億トンに達したと、米国カリフォルニア大のチームが報告しました。同チームによれば、これまで人類が作り出したプラスチックは83億トンで、その8割弱がごみになっている計算になります。プラスチックの生産量は現在も増加の一途です。
わが国では、レジ袋の削減対策がいろいろと試みられてはいますが、まだ、プラスチック製容器包装材の使用規制は導入されていません。いずれにしても、私たちがこのままプラスチック製品をつかい捨てていけば、やがて地球はプラごみで覆われてしまうでしょう。私たちはさらなるプラごみ対策を検討する必要があります。
世界経済フォーラムの報告書(2016年)によれば、少なくとも年間に800万トンのプラスチックが海に流れ込んでいるということです。 そこで最近、海外の国では、プラスチックごみによる海洋汚染を防止するために、使い捨てプラスチック製品の使用を制限する政策が取られ始めました。
例えばEU(欧州連合)は、スプーンやフォーク、皿、ストローなどの使い捨てプラスチック製品の流通を禁じる法案を、2019年5月までに加盟国の間で承認を得る方向です。また英国やフランスも独自に、19、20年を目途に使い捨てプラスチック製品の仕様や販売を禁止する法整備に踏み切りました。
最近、環境問題分野でプラスチックの問題がよく取り上げられる。そもそも、わが国でどれぐらいプラスチックが使われているのであろうか?消費量の統計を見ると日本人一人1年で76kgとある。一方、鉄製品は一人1年で400~500kgと言われている。さすがに「鉄は国家なり」と言われて,重量ベースでは確かにプラスチックは鉄製品にははるかに及ばないが、容量ベースではどうであろうか? プラスチックの平均的な比重1.1、鉄の比重7.8を用いて先の消費量を容量ベースに換算すると、驚くことにプラスチックが69L/人・年、鉄が64L/人・年とプラスチックの方が多くなっている。その意味では、実は我々は鉄製品に囲まれているよりはプラスチック製品に囲まれて生活していると言っても過言ではないのである。まさに、「プラスチックは国家なり」となっているのである。
プラスチックによる海洋汚染問題、とりわけマイクロプラスチックと呼ばれる5mm以下のプラスチック破片による汚染が深刻視されています。そこで、このマイクロプラスチックの由来を名探偵コナン風の探偵が捜査をすると、海から河川にさかのぼり、ポイ捨てする消費者(共犯者)から、ついには使捨てプラスチック製品を生産・販売する事業者を発見しました。そんなわけで、プラスチックの海洋汚染問題ではやはり上流側での対策が望まれるのです。
これまでわが国では廃プラスチック類で雑プラと呼ばれる分別されていないプラスチック廃棄物は中国をはじめとする東南アジア諸国にリサイクルを名目に輸出して処分してきた。しかしながら、最近、中国が雑プラの輸入を禁止し、さらに、有害廃棄物の越境移動を禁止するバーゼル条約で雑プラが規制対象になり、わが国の雑プラは海外への行き場がなくなってきたのである。海洋プラスチック問題も含めてわが国では廃プラスチック問題が大きな社会問題となってきた。
プラスチック問題が社会問題化し始めて、多くのグローバル企業がその対策に乗り出して来ています。しかし、その対策の多くはリサイクルであり、根本的にプラスチックの使用を制限しようとする動きは少ないようです。消費者もプラスチックの利便さに慣らされたせいか、リサイクルに協力するので使用は容認する雰囲気です。小型ペットボトルの解禁の時もリサイクルが免罪符となり、現在のペットボトルの氾濫につながりました。そんなわけで、リサイクルが受け皿である限りは使い捨てのプラスチック問題はなかなか解決しないのではないでしょうか
おわり
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