京都新聞エコロジー60

 地球全体の存続に関わる

 アメリカのトランプ政権は貿易収支の改善を図るべく、輸入品の自動車や鉄鋼製品に高い関税をかける政策をとろうとしています。標的となった中国をはじめとする国々も、その対抗措置としてアメリカ製品に高い関税をかける措置を検討し、いわゆる貿易摩擦が心配されています。

 これは一種の経済紛争ですが、もう一つの心配は「環境摩擦」です。トランプ政権はエネルギーの自立化を目指すとして、パリ協定の離脱を表明するとともに、自国の石炭産業を後押しすべくCO2の排出規制を撤回しようとしています。

 一方、中国など経済発展の著しい国々では、これから環境改善に多額の経費がかかるため、環境規制の強化にはどうしても後ろ向きになりがちです。そこで、環境対策を巡って各国間で摩擦が起こる可能性があります。

 貿易摩擦は当事者国同士の経済的な損得の問題にとどまりますが、環境摩擦は地球全体の存続に関わります。その意味で、環境摩擦だけは何としても避けたいものです。

 

               (高月紘・京エコロジーセンター館長)