京都新聞エコロジー第32回
2017年7月14日付
「右肩上がり」にはいずれ限界が
現在は多くの国が経済成長を国の政策の第一に掲げています。我が国もしかりです。しかしながら、持続可能な社会を目指すとき、いつまでも「経済成長第一主義」で進められるかといえば、経済成長は多くの場合、環境負荷を高めることになるので、いずれ環境や資源の制約の中で限界が来るものと思われます。そこで、注目される経済政策が「定常経済論」です。
この考え方は、エコロジー経済学の第一人者で、最近、KYOTO地球環境殿堂入りをされたハーマン・デイリー博士が唱えるものです。すなわち、経済の成長を重視するのではなくて、環境や資源の制約の範囲内で経済活動を行い、たとえGDP(国内総生産)がゼロ成長であっても、持続可能性を優先させる経済と社会を目指す考えです。
特に、わが国の場合、すでにある程度成熟した社会を形成しているので、いまさら、かつての高度成長期のような経済発展を望むのでなく、むしろ、公平な富の分配による格差の是正や地球環境の保全に力を注ぐべきだと思います。
(高月 紘・京エコロジーセンター館長)