京都新聞エコロジー 57

 過剰な使用 新たなリスクに

 抗生物質は1940年代に、結核をはじめ多くの感染症に対する画期的な治療薬として登場し、人類に大いなる福音をもたらしました。しかし、今、抗生物質の過剰使用が私たちの体内の生態系を撹乱(かくらん)していると心配されています。

 山本太郎著「抗生物質と人間」(岩波新書)によれば、人の体には百兆個を超える細菌類があり、食べ物の消化吸収を手伝い、免疫力のバランスを調整し病原菌の侵入を防ぐなどの働きをしているのですが、この人間と微生物との共生が抗生物質の乱用によって脅かされていると警告しています。

 例えば、最近は家畜の成長促進効果、すなわち肉量が増えることを狙って、人の医療用をはるかに超える量の抗生物質が投与されているようです。また、風邪でも抗生物質が安易に処方されています。

 こうした抗生物質の過剰とも言える使用はやがて、人間にとって新たなリスクをもたらすのではと心配します。私たちは抗生物質について正しい知識と適切な使い方を学ぶ必要がありそうです。

               (高月紘・京エコロジーセンター館長)